23時06分

顔についたうざったい髪の毛を払い取るように自分の気持ちを書き残そうと。

2017/08/14:1900円の時間の中に

「しまった~。」

現在23時17分。
今日は土曜日、地元のバスは23時10分ので最終だった。

「今日にかぎって雨だったから、行きはチャリで来てないしな~。」
「歩いて帰ったら1時間くらいかかるし、仕方ない、タクシー使うか。」

久しぶりのタクシー。
念のため、現金があるか確認する。
千円札が数枚に、小銭がじゃらじゃら。
これなら十分だろうと、タクシー乗り場へ向かう。

何台ものタクシーが連なって止まっており、先頭の黒いタクシーへと乗り込む。
「こんばんは~、○○までお願いします。」
「わかりました~、ドア閉めますね~。念のためシートベルトお願いしま~す。」

タクシーで帰ればだいたい30分以内に家に着く。
あ、家の近くのコンビニで降ろしてもらうよう言えばよかったな。
飲み会のあとはどうしてか何か食べたくなる。

「雨やんでよかったですね~。」
「そうですね~、朝はどしゃぶりでしたもんね。」

お、今日はおしゃべり系運ちゃんか。

「まぁ雨に降られた方がお客さんがちょっとばかし増えるんで、こっちとしてはありがたいんですけどね。」
「あ、そうなんですか。」

なんでだ?

「やっぱり雨の中、濡れた傘を持ちながらじめっとしたバスとか電車とか、使いたくない人がいるみたいでね~。」
「へぇ~。」

なるほど。



「そういや最近のニュース見ました?」
「最近のですか?」

なんかあったっけ?

「そう、ほら、タクシーの運ちゃんがお客さん刺しちゃったやつ。」
「あぁ、見ました。怖いですよね~。」

タクシーの運ちゃんなのにこのネタふるんかい!

「こんな感じの暗い道でやっちまったって言ってたよなぁ。」
「あー、そうですね。田舎の方みたいなこと言ってた気が…。」

なんかちょっと怖くなってきちゃったじゃん・・・。

「魔が差しちゃったんだかね~。」
「どうなんですかねぇ…。」

え、なになに。

「お姉さんは、誰かやっちまいたいなぁなんて、思ったこと・・・ある?」
「え・・・?」







「俺もうこの仕事続けて結構長いけどよ、どんなに嫌な客が来たってコロしてぇなんて思ったことはないよ?」

「いろいろと心に溜め込んじまう人が多いんだろうね、今の世の中はさ。」
「生きづらくなっちまったってことは、よく分かるけどな。」
「自分の人生に損になるようなことはやっちゃいけないよ?」

自宅付近の電柱が目に入る。
「あ、その辺で大丈夫です。」
「はーい。それじゃあ1900円ですね。」
「…ぴったりあります。」
「はい、ちょうどですね。あ、なんかいっぱい話聞いてもらっちゃったし、飴ちゃんやるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「これ俺の好きな飴なの♪」
「ふふ、本当にありがとうございます。」

その電柱から家まで歩いて5分くらい。
その道中、貰った飴をなめてみる。

「あ、私も好きな味。」

ちょっぴり甘めのコーヒー飴だった。


「1900円の時間の中に」
2017/08/14 13:36